第28回、改造計画
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フィラデルフィア・76ers 多くの将来有望な若手を抱え、司令塔にA・ミラーが加わり、躍進が期待されるフィラデルフィア・76ers。 アウトサイドシューターのK・コーバー、インサイドでチームの骨組みになることが期待されているS・ダレンバート。そしてリーグトップクラスの才能を誇るA・イグダラとW・グリーン。 多くのものに恵まれているような76ers。だが、来シーズンの目標を優勝とした場合、そうとはいいきれない。 オフの最優先課題としていた、J・スミスとの再契約にA・イグダラとの契約延長だが、スミスはすでにシカゴ・ブルズ移籍を決めた。 リバウンド力はリーグ24位の39.7で、イグダラにコーバー、グリーンを擁し豊富なイメージのある得点力もリーグ26位で94.9。 一方で、イグダラの23歳を筆頭に皆、若く成長が期待できるのも事実。 優勝をすぐの目標とした場合、76ersにはこの「期待」と、安定感を持つ「実績」との適度なトレードが必要となるのかもしれない。
だが、そのトレードは容易ではない。 というのも、76ersは現状で既に来シーズンのサラリー総額が6800万ドルを越えている。しかも、そのうち2600万ドルはバイアウトしたもので、プレイヤーはすでに移籍しておりトレードも不可能(C・ウェバー1900万ドル、A・マッキー700万ドル)。要するに、実質、プレイヤーとして存在するのは4200万ドル分というのが実情だ。その戦力の成長を期待するか、トレードするかして優勝を目指さなくてはならない。 選択枠は限りなく少ない。 前回のポートランド・トレイルブレイザーズでもバイアウトしたS・フランシス(来シーズンのサラリー、1644万ドル)に、怪我などで全く期待通りのプレーが出来ていないR・ラフレンツ(1181万ドル)にD・マイルス(825万ドル)にJ・プリズビラ(576万ドル)がいたが、フランシス以外はチームに在籍しており、一応トレードは不可能ではなかった。 特に実力のある、または成長が明らかに見込める若手プレイヤーは現状ではサラリーは安く抑えられているが高額契約を勝ち取った大物とのトレードも視野に入れなければならない。そのためにもこの「トレードができる」というのは大きい。(サラリーキャップをオーバーしているチーム同士、つまりほとんどのチームはトレードするプレイヤーのサラリーの釣り合いをルール上、とる必要があるため) 76ersにはそれがない。そのくせ、バイアウトした契約により、サラリーキャップを超過しているため、トレードする際にサラリーキャップの釣り合いを取る必要がある。 来シーズンのサラリーで高額契約となると、ダレンバートの968万ドル、ミラーの936万ドル(正しくは1077万ドル。トレードキッカーの影響で76ersにトレードとなり、サラリーが上昇したため)ぐらいで残りはイグダラからコーバーまでが200万ドル台から400万ドル台に並んでいるだけだ。 そうなると、トレードをするとなれば、こちらと条件の近い「実力はあるがサラリーは抑え目になっている」といういかにも獲得が難しそうなプレイヤーを探すしかなくなる。(・・・なんだが、始める前の状況説明を復習の意味でも書き始めたわけだが、ちょっと凹んできた(笑)) 泣き言ばかり言っていたいが、それでは進まないので、本題。 76ersから期待のW・グリーン(来シーズンのサラリー、309万ドル)、A・ミラー(同936万ドル。正しくは1077万ドル)、S・ハンター(324万ドル)のを放出する(計約1550万ドル)。 代わりに、クリーブランド・キャバリアーズからZ・イルガウスカス(1014万ドル)、D・グッデン(640万ドル)、D・ギブソン(68万ドル)を獲得する(計約1700万ドル)。 スタッツ的には76ersが「得点-3.5、リバウンド+6.4、アシスト-5.9」となる。
76ersとしては昨シーズン、ファイナル進出を果たしたキャブスの屋台骨を支えた経験のあるベテランを獲得し、得点とリバウンドで安定感を得る。 アレン・アイヴァーソンを軸として、強かった76ersにはD・ムトンボにT・ヒルなどのインサイドに頼れる存在がいた。インサイドの補強なくして、大きな躍進はありえない。 キャブス側にはあまりメリットの無いトレードのようだが、W・グリーンとD・ギブソンでは明らかにグリーンのほうが見込める成長が大きい。L・ヒューズが怪我で不安を抱える状況で、ラブロン・ジェイムスのいい相棒になってくれるのではないだろうか。しかも、グリーンは契約をまだ4年も残しており、金額も4年で約1400万ドルとかなりのお買い得なプレイヤー。 キャブスはPGの補強を希望していることも知られており、PGがトレードの噂になるとちょくちょく名前が出てきている。キャブスでのプレー経験もあるA・ミラー獲得でその問題は一転、チームの強みになる。 放出するプレイヤーでは、ギブソンは確かにキャブスも期待しているだろうが、契約は来シーズンいっぱい。また、イルガウスカスや、グッデンはことあるごとにトレード要員として名前があがっており、チームとしても「走るチーム」を作りたがっているとされている。 A・ヴァレジャオ、S・パブロヴィッチとの再契約を交渉中とされるキャブスだが、このトレードでお買い得のグリーンを除いて、イルガウスカス(3年約3200万ドル)とグッデン(2年1350万ドル)での計約4550万ドルから、A・ミラー(2年1935万ドル)とハンター(3年1040万ドル)の計約3000万ドルと、サラリー契約残をおよそ1500万ドル削減することができる。今シーズンに限っても150万ドルのサラリーカットに成功している。 続いては、今獲得したグッデンを更にトレードし、ヒューストン・ロケッツからS・バティエ(588万ドル)を獲得。
コーバーのディフェンスは正直、いまいち。そこを補うべく、ディフェンスのできるバティエを獲得する。3Pも打て、イグダラのスペースをより広げることができるだろう。 J・ハワードをトレードし、D・ムトンボとも再契約が出来ていないロケッツ。 ハワードのトレードでM・ジェイムスを獲得するなど、バックコートには人材が豊富だが、フロントコートには頼れるプレイヤーが少ない。昨シーズン、ロケッツでY・ミンに次いでリバウンドを取ったのは198pのC・ヘイズ。それにムトンボ、J・ハワードと続いていた。 このトレードは双方にとって、消して損になるものとは思えない。 ただ、ロケッツについては正直、「どうしたいのか」がみえてこないので、このトレードもバックコートに偏っていた戦力を使って、フロントコートを補強するもので、いいトレードだとは思うのだが、のってくるかどうかは未知数ではある。 次はシアトル・スーパーソニックスとのトレードをまとめる必要がある。 PGにアンドレ・ミラーがいたが、彼をトレードに出し、代わりにD・ギブソンを得た。しかし、期待の若手とはいえ、ギブソン一人では優勝などとても無理。 そこで、ソニックスからルーク・リドナー(650万ドル)を獲得する。 リドナーはゲームを支配することは望めないが、チームの流れを保つことのできる基本性能に優れたPG。イグダラがゲームの多くをコントロールするとした場合、そつなくPGを務められるリドナーは76ersのPGに適任といえる。 見返りに放出するのはK・オリー(344万ドル)にR・カーニー(154万ドル)、S・ランドルフ(108万ドル)だ。
オリーは契約が来シーズンいっぱいで、ソニックスは来シーズン後にサラリーキャップの空きを増やすことができる。カーニーは身体能力の高いFで、3Pも34.7%とまずまず。いいバックアップになってくれるのではないだろうか。 注目はランドルフで、昨シーズンは13分の平均出場時間で4.5得点・4.2リバウンドを記録している208cmのFだ。FTが54.6%と悪いが、得点にリバウンドは期待のできる数字。ソニックスでチャンスを与えれば、あるいは契約最終年ということもあり頑張りを見せるかもしれない。 あとは2巡目指名権をつけてすめば御の字といったところだが、1巡目指名権になるだろうか。 このトレードの問題点はソニックスがすでに14人と契約下にあることで、このトレードで16人になる。Dリーグを活用するにしても(確か3人まで送ることができたはず)、人数が多いのは間違いない。 だが、それを除けば、このままいけばサラリーキャップの空きを確保でき、少し気が早い気もするがデュラント引き留めへ、大物の補強も可能。来シーズン後にはそれほど大きな空きはないが、その次となるとどんな大物でも獲得可能なほどに空きを作ることができる。 1巡目指名権をつける代わりにランドルフを獲得直後に解雇、76ersが再契約するというあらすじを書ければ言うことなしなのだが、ルールにひっかかりそうだが実際引っかかるのかどうかはわからない。 最終的にはこうなる。 PG L・リドナー(控え、D・ギブソン) SG A・イグダラ(T・ヤング、今ドラフトで1巡目12位指名を受けたルーキー) SF S・バティエ(K・コーバー) PF S・ダレンバート(S・ランドルフ) C Z・イルガウスカス(J・スミス、今ドラフトで1巡目20位指名を受けたルーキー)
2007ドラフト、1巡目20位指名 Jason Smith ダレンバートがPFというのは仕方なくというところもあるが、機動力があるのでPFに対してもディフェンスできるのではないかと期待している。オフェンスではインサイドに特化したダレンバートと、ミドルでのジャンパーを決められるイルガウスカスとで問題はない。昨シーズン、ファイナルでインサイドを守りきれなかったキャブスのインサイド陣。ダレンバートを鍛え、イルガウスカスとのツインタワーを形成し、対シャック、対ダンカンを見据える必要がある。 このロスターの強みはイグダラとの契約延長さえできれば、ギブソンを除いて主力プレイヤーは3年以上の契約を残していることだ。 P.J.ブラウン?それこそ、C・ウェバー? 獲得できれば、イースタン・カンファレンスにあって、昨シーズンの覇者クリーブランド・キャバリアーズに対抗でき、マイアミ・ヒート、デトロイト・ピストンズ、更にはサンアントニオ・スパーズを見据えることもできる。気になるのは同じディヴィジョンのボストン・セルティックスだが、ここについてはセルティックス自身もどうなるかわかっていないだろう。セルティックスの補強を阻止する意味合いも含め、早急にベテランを確保する必要がある。ここの争奪戦で敗れれば、そのつけはゲームとシーズンの、それぞれの終盤に払わされることになるだろう。 イースタン・カンファレンス3位以上でのプレイオフ突入。 これがかなえば、昨シーズン35勝のチームは一躍、優勝候補に登りつめることができるだろう。 ファイナルまではこれで見えてくる。問題は昨シーズンのファイナルをみせられたあとに、あのT・パーカーを止められるとはとてもいえないことだろう。だから、今回はツインタワーを形成し、対応できる可能性を作ってみたつもり。 オフェンスではバティエ、コーバーのシューターにはさすがのスパーズも手を焼くだろう。 そして、イグダラvsボーウェン。ボーウェンが昨シーズンよりひとつ年を取り、イグダラは昨シーズンよりひとつ成長する。ボーウェンをつければスピードでついていけず、他のプレイヤーでも止められない。そういうプレイヤーになること、イグダラには来シーズンそれが求められる。 欲を言えば、Gにももう一人両Gをバックアップできるようなベテラン(ほんとを言えばそれぞれに一人づつ欲しいが…)が欲しいところ。デトロイト・ピストンズのフロント入りをするとか言われていたリンジー・ハンターなど、獲得できれば。 だが、一番希望はダレル・アームストロング。サイズは無いがSGにも負けじとあたっていくエネルギーと39歳という経験を併せ持った素晴らしいPG。アームストロング獲得は絶対にチームにとってマイナスにはならない。これは今回の計画のどのトレード案よりも自信を持って言える。現在、インディアナ・ペイサーズと契約に保証をつけるよう交渉中のはずで、2巡目指名権とのトレードぐらいで獲得できるのではないだろうか。 ここまで仮にできたとしても「イースタン・カンファレンスで3位」に「優勝候補入り」となるのは正直、難しいところがある。 リドナーの経験不足と、イグダラの成長具合が未知数なところが大きい。 イグダラはアシストもできるスコアラーとしてすさまじい存在になろうとしている。だが、まだ「なろうとしている」段階で、来シーズンがどの段階となるのかはわからない。 リドナーがこれまでの「黒子」のようなプレーからもう少し、存在感をアピールできるまでの存在と成長し、イグダラが「若手」として期待されるのではなく、チームを引っ張れるリーダーと成長する必要がある。 層の薄さにチームディレンス。 ここまでやっても課題はまだまだ残されているが、これが叶えばフィラデルフィア・76ers優勝への工程は大きく進むことになるのではないかと、無い知恵を絞ってみました。 あのファイナル進出から低迷を抜け出せずにいた76ers。 その時のというか、トレードする寸前までチームの大黒柱だったアレン・アイヴァーソンを放出し、次のステップへ強制的にチームを前進させた。 昨シーズンはそのごたごたもあったので仕方なかったが、来シーズン、チームとして前進し、ウェバー&マッキーの契約の呪縛から解き放たれた2008-09シーズンには、新しい76ersが大きく動き出すかもしれない。 来シーズンはさしあたって「序章」ということになるんでしょうか。 次回はマイアミ・ヒート、ミネソタ・ティンバーウルブズ(これ、間違いじゃなくて?)、ロサンゼルス・レイカーズの中からできた順に更新したいと思います。 ちなみに、このコラムは「来シーズン、優勝を目指すような体制を無理やりにでも作る」というもの。あれ?ウルブズ(笑)? 実はちょっと、ヒートについてはすでにかかっているんですが、どうも動きがありそうなので、ひょっとしたらやってる最中にトレード、なんてことになったらはっきりいって0からやり直しです。ので、どういった順番になるかはわかりませんがどうか、ご了承ください。 asua さて、いかがでしたでしょうか。 ご意見、ご感想など、掲示板でもメール(nbafanspage@hotmail.com)へお気軽にどうぞ。ただ、しつこいようですが実に小心者な者ですので、何重にかオブラートに包んでいただけると立ち直るのにかかる時間が短縮できるかもしれません。 よろしければこちらで採点も受け付けております。 以下は考えたけど、ボツになったトレードたち。 マイアミ・ヒートとのトレード。 A・ミラー(936万ドル。正しくは1077万ドル)とU・ハスレム(605万ドル)+M・ドレアック(312万ドル) PGを熱望していたヒートだが、S・パーカーと契約し、一応の決着を見た(納得がいっていなくても、サラリーにせよ、トレード要員にせよを、急務であるSFをそっちのけにして、PGに再び使うとは考えられない)。パーカーとの契約前であれば、あるいはあったかもしれないトレードだが、現時点ではありえないことからボツ。 ちなみに管理人はヒートのハスレム放出は実行されれば、とんでもない暴挙と見ており、「ヒート視点」では実行されないことを願っている。逆に76ers視点では、獲得できればこれほどおいしい人材も少ない。 オーランド・マジックとのトレード。 A・ミラー(936万ドル。正しくは1077万ドル)とT・バティ(520万ドル)+C・アローヨ(400万ドル)をトレード。 アローヨはフィジカル面ではやや頼りないが、それ以外では一定のディフェンス力を有し、オフェンスでは素晴らしい判断力を備えている。バティはスターターとするにはやや頼りないが、フロントコートの両ポジションのバックアップとしてはいい人材。 だが、このトレードはアローヨとバティに対する管理人特有の高評価があって始めて行えるもので、私以外は誰も納得しないんじゃないかと思い、却下。 一応、J・ネルソンとの契約延長交渉がもつれていることが、このトレードのもう一つの前提条件となるのだが。 デンバー・ナゲッツとのトレード。 A・ミラー(936万ドル。正しくは1077万ドル)を軸に、M・キャンビー(800万ドル)を獲得し、ナゲッツ側には他のプレイヤーを引き取るなどし、サラリーキャップ上のメリットを提示する。 ナゲッツはサラリーキャップの少しでも抑えたいと考えており、ミラーのサラリーで獲得できる上限(936万ドル(正しくは1077万ドル)×125%+10万ドル)である1180万ドルに獲得プレイヤーのサラリー総額を合わせることで、ナゲッツが元ナゲッツの連れ戻しを計画するかもしれないと考えたもの。 しかし、ご存知の通り、ミラーをナゲッツがトレードに出したのはついこの間でそれもナゲッツから。もし、76ersがキャンビーを希望していたのなら、それでトレードを詰めたものと思われる。要するに76ersがミラーをキャンビーより評価している、もしくはナゲッツがその逆、ということになるため、両者に大きな心変わりが起きていない限り難しいトレード。 また、S・ブレイクがチームを離れ、PGを求めていたナゲッツだが、タイプは違うがC・アトキンス獲得で形にはしていることから、更に実現が難しいと考えた。 ポートランド・トレイルブレイザーズとのトレード。 A・ミラー(936万ドル。正しくは1077万ドル)をトレードし、L・オルドリッジ(432万ドル)+J・プリズビラ(576万ドル)を獲得するというもの。 ブレイザーズの回でも書いたとおり、経験と安定感はこの若いチームには必須だと思われるが、このトレードを実行するとあまりにもブレイザーズに使えるPGの数が多くなりすぎる。その為、オルドリッジをC・フライに変えて、+J・ジャックをつけることも考えたがそうするとブレイザーズ側の条件が悪くなりすぎる。 また、このトレードが実行された場合、今度は76ersが若くなりすぎる。ブレイザーズが抱える問題を代わりに抱えることになるもので、貴重なトレード要員を新たな問題の発生原因に使えるほどのゆとりはない。 |