第89回

「イースタン・カンファレンス、1stラウンド予想」

プレイオフ、イースタン・カンファレンス


1stラウンド

デトロイト・ピストンズvsフィラデルフィア・76ers
プレイオフになんとか8位で進出を果たした76ersだが、このシリーズ、まさに完敗。
ゲーム2こそアレン・アイバーソンが一人39得点&8アシストと気を吐き、1勝をあげるも、他の4ゲームでは28.8得点&FG38.8%と抑え込まれ、ピストンズが4勝1敗でシリーズを制した。
勝ったピストンズ側で特筆すべき活躍を示したののは、ベン・ウォレス。レギュラーシーズン11.3リバウンドの数字をこのシリーズでは13.8リバウンドと76ersのインサイドを圧倒。ブロック(シーズン2.1をシリーズ2.8)スティール(同1.6を2.2)でもシーズン以上の働きを見せた。
他で得点などでシーズンアベレージと大きな差のあるプレイヤーはいなかった。これについて聞かれるとチームのチャウンシー・ビラップスが
「今回のはベンがすごいんだよ。それにシーズン通り戦えているのが僕たちの強みなんだ」
とコメントしている。
一方のアイバーソンは
「完全な負け。もう手も足も出なかったよ。けど、うちには伸び盛りのプレイヤーが何人もいる。来シーズンもこうだとは限らない」
と来シーズンの雪辱を誓った。

マイアミ・ヒートvsミルウォーキー・バックス
レギュラーシーズン最後の2ゲームになんとか間に合ったヒートのCアロンゾ・モーニング。シーズン最後の2ゲームでは約16分プレーし、5.5得点&4リバウンド&1.5ブロックを記録した。
バックスはエース、マイケル・レッド&シリーズ好調だったボビー・シモンズのアウトサイドに加え、意外にも活躍したのがシーズン5.4得点に終わったダン・ガズリッチ。特に効果的だったのがモー・ウィリアムスとガズリッチとのピック&ロールで、ガズリッチがヒートのシャキール・オニールとのスピードのミスマッチを生かし、得点を量産。シリーズで8.6得点&FG53.8%を記録した。
対するヒートはオフェンスでの打ち合いで対抗。シャックもシーズン30.2分にの出場時間を35.3分まで延ばし、24.2得点&11.2リバウンドを記録。ドゥウェイン・ウェイドも28.4得点をあげた。
また、シーズンではほとんどなかったシャックとモーニングの同時起用をプレイオフに入って多用。1ゲームあたり12分ほどをこの同時起用を使い、この間のスコアでは75-40(5ゲームトータル)と圧倒。これもあってシリーズを1勝1敗から盛り返し、4勝1敗でヒートが制した。
しかし、シャックが最終戦となったゲーム5で左足首を捻挫し、第4Qを全欠。モーニングが踏ん張り勝利を収めたものの、モーニングも万全の体調ではない(本人のコメント「(シーズン終盤で痛めた右ふくらはぎの)怪我が大丈夫かだって?そんなわけないだろ、まだ痛いよ。プレイオフだからそんなこと言ってもいられないが」)状況を考えると、続くセミファイナルでの苦戦が予想される。


ニュージャージー・ネッツvsワシントン・ウィザーズ
イースタン・カンファレンス、プレイオフ1stラウンドでスウィープをやってのけたのはピストンズでも、ヒートでもなくネッツだった。
ホームコートでのゲーム1、2をいずれも二桁以上の点差で圧勝すると、続くゲーム3、4も8点差(93-85)6点差(101-95)で危なげなく勝利しシリーズを制した。
ネッツを牽引したのはシーズンと代わらず、不動のリーダー、ジェイソン・キッド。
キッドはシーズン終盤から調子を落としたヴィンス・カーター(※)をフォローするかのように、得点面でもチームに貢献。18.0得点&9.5アシスト&6.4リバウンドを記録。特にターンオーバーでは2.2とウィザーズのPG、ギルバート・アレナス(5.8アシスト、3.8ターンオーバー)と格の違いをまざまざと見せ付けた。
※カーターは、ラスト6ゲームで16得点&FG39.3%。特に3P%は26.7%と散々。一部報道では4/9のミルウォーキー・バックス戦で右手中指を突き指した影響ではないかとされたが、「関係ない」と噂を一蹴している。だが、ゲーム1には同箇所にテーピングをしてプレー。1stラウンドでは22.2得点&FG42.1%&3P30.8%を記録。



クリーブランド・キャバリアーズvsインディアナ・ペイサーズ
終盤にカンファレンス内での順位を引き上げ、調子も上向きのインディアナ・ペイサーズ。勝負強さを疑問視する声もあるラブロン・ジェームスは初のプレイオフ。
大方の予想通りシリーズは最終戦までもつれ、シリーズを決したのはそのジェームスのFTだった。


ホームでのゲーム7を前に、
「絶対に負けられない。この日のためにNBA入りから頑張ってきたんだから」
と話したジェームス。
対するペイサーズのジャーメイン・オニールは
「ここ数年、チームでいろんなことがあってプレーに集中できない時期もあった。それが今はチームとしてまとまっていると感じる。負けるわけないよ」
と話し、自信をのぞかせていた。

しかし、どちらもまだ未完のチームなためか、キャブスが二桁近いリードを確保すると、今度はペイサーズが同様のリードを取り盛りかえすという状況が続き、どちらもリードを守ることができない。そんなゲーム7も、第4Q残り12.9秒。点差は3点でキャブスがリード。FTラインにたったのはジェームス。キャブスのホームコート「TheQ」はMVPの大合唱。しかし、ジェームスはこの日、FTを6/14と決めていない。だが、このFTに導くビックプレー(J・オニールを後ろからブロック)をしてのけたのもジェームスだ。

2投決めればキャブスは大きなリードを手にし、2投とも外せばペイサーズに可能性が残る。


1投目、失敗。
もれるため息。

大きく息をついての2投目。
今度は決めてジェームスも小さくガッツポーズ。点差は4。
ペイサーズはすかさずタイムアウトを取り、チームに作戦を与えるリック・カーライルHC。

再開してジェームスはペイサーズのシューター、S・ジャクソンにぴったりマーク。スクリーンを使ってフリーになろうとするP・ストヤコビッチにはスウィッチしてE・スノウがつく。
だが、ここで3Pを打ったのは、J・オニール。レギュラーシーズンでトータル5/16、シリーズ試投数0のオニールにチームはゲームを託した(タイムアウトがもうなかったこともあったのだろうが)。

なんと、オニールも期待に応え、これを沈めてみせ、点差はついに1点。残り8.1秒。

キャバリアーズもタイムアウトを取り、作戦を練る。

タイムアウト後、ボールを入れるのはスノウ。チーム1番のFTシューターは意外にもCのジドルナス・イルガウスカス(シーズン83.4%、ゲーム7では7/8)。
だが、この時スノウが選択したのはジェームスだった。ジェームスへの高いパス。

「あのプレーはコーチの指示じゃなかったんだ。本当はトップでジェームスがパスをもらうはずだったんだ。けど、それには前に出た(スティーブン)ジャクソンが邪魔だった。するとジェームスが切り替えした先、インサイドが開いてたんだ。アイコンタクト…さえなかったね。けど、決めると思ったよ」
とゲーム後話すスノウ。

ボールを両手でゴール右側上空でつかむジェームス
グッデンをマークしていたオニールがブロックに
オニールの左手がジェームスの右手を内側から叩く
ジェームスは体勢を崩しながら右手のワンハンドダングを叩き込む!


一瞬の間のあと、レフェリーのコール
カウントワンスローが告げられた



まさに観客総立ちの合唱に、ジェームスも雄叫びで応える。
ファールアウトとなり、ベンチへ下がるオニールの足は重かった。
ジェームスは、今度はFTもしっかり決め、その後のペジャの3Pが外れ、勝負あり。
最終スコア93-89で、クリーブランド・キャバリアーズがカンファレンス・セミファイナル進出を4勝3敗で決めた。

「なんだろう、よく『ピンと来た』とかいうだろ。これがそんな感じかな。周りの動き、自分も含めてだけど、それがスローに見えて、いける!と思ったよ。その後のアリーナ一体となったあの大騒ぎは…きっと忘れられないだろうね」
そう笑顔でゲーム後に話すジェームス。終始じっといられないようで、笑顔でインタビューを受けていた。
「ラブロンはいつも私の予想を遥かに超えたプレーを見せてくれる。今日のは超え方がちょっと高かったね」
そう笑うのはマイク・ブラウンHC。
先のコメントに続いてスノウも
「そう、決めてくれるとは思ったよ。ただ、あそこまでは期待してなかったけどね」
と笑いながら話した。

一方、ペイサーズ側ではオニールが言葉少なにインタビューに答えた。
「まさか…、なんていっていいのかわからない…。あの時(最後のブロックショットの際)、飛んでからも様々な選択枠が頭をよぎったんだ。…そう、本当に色々。けど、その中で最悪のものを選び、最悪の結果を招いてしまった」
リック・カーライルHCはこういうオニールを擁護した。
「ジャーメインはよくやったよ。その前の3Pを沈めてくれなければあのシーンにまで我々がいくことはなかった。彼がシリーズで頑張っていなければ(オニールはシリーズ23.0得点&11.0リバウンドの大活躍。ゲーム7では33得点&9リバウンド)ゲーム7にさえいっていなかっただろう。チームは間違いなく前進している。今から来シーズンが楽しみだよ」

チームでの去就が注目されるペジャ・ストヤコビッチは
「また、このチームでここに戻ってきたい」
とだけ話した。

以上の結果から、イースタン・カンファレンス、セミファイナルは対戦カードは以下の通りとなった。
デトロイト・ピストンズvsクリーブランド・キャバリアーズ
マイアミ・ヒートvsニュージャージー・ネッツ
現地時間5月10日にまずピストンズvsキャバリアーズのゲーム1が行われる。



asua



↑バックナンバーはこちらから。



inserted by FC2 system