第67回

「ネッツの思惑」


 


 「やはり・・・」
 そう思われる方も多いかと。チームがPFのケニヨン・マーティンをドラフト指名権とトレードしたことを受け、ニュージャージー・ネッツのジェイソン・キッドが早急にインサイドの補強が行われない限り、トレードを希望するだろうと一部報道が伝えた。(ここまでは「ニュース」より)

 昨シーズンは優勝へ向け、インサイドにアロンゾ・モーニングを獲得するも病に倒れ、引退。キッドも怪我に見舞われ、チームも移転騒動でどたばたと、いいとこなしのシーズンを送った。

 来シーズンへ向け優勝したいキッドとしてはマーティンの保持、もしくは同等のプレイヤーの補強を求めいているのは明らか。しかし、チームの取った判断はドラフト指名権と言う将来への布石。チームプレシデントのロッド・ソーン氏も「マーティンを失い、よほど幸運でない限り、優勝候補にはなれない」とコメント。優勝どころか、候補ですらないと。

 思うに、アロンゾ・モーニングのサラリー(本来、引退したプレイヤーのサラリーは保険で補われることが多いが、モーニングの場合、契約前から健康状態に不安があった為保険は適応できなかった)にディケンベ・ムトンボ、ケリー・キトルズのサラリーの為、来シーズンへ向けたFAでの補強はほぼ絶望的。もちろん、「来シーズンいっぱいで契約が切れる」と言うのを売りにトレードでの戦力補強も考えられるが、チーム経営の先が見えないネッツが「戦力」として計算が立つ長期契約を結んでいるプレイヤーを取ると言うのは考えにくい。そうなるとムトンボ、キトルズとの契約が来シーズンいっぱいで切れることもあり、来シーズンをあきらめ来シーズン後のオフへ向けサラリーに空きを作り、ドラフト指名権を集め、一気に再建を図るつもりではないだろうか。そうすれば、当然キッドがトレードを希望する、と言うのも承知の上で。要するにトレードでマーティンを出したのも、その見返りをドラフト指名権としたのも、それによってキッドがトレードを志願したのも全ては・・・。

 もちろん、希望としてはこの稀代のPGの残留だろうが、放出も止む無しと。
 現在、来シーズンのサラリー総額がプレイヤーが10人にもかかわらず5600万ドルを超えている。レイカーズがそうしたように、ネッツもどこでも引く手あまたなキッドを将来性のある若手+ドラフト指名権でトレードすることにより、経済的負担の軽減と将来のサラリーキャップの空きにドラフト指名権の獲得と言う一度に何度も美味しいトレードを画策しているのでは、と考えるのは考え過ぎだろうか。
 また、チーム状況からキッドの放出、それによる再建の早期完了を目論んでいたとしても、キッドがトレードを志願、チームはやむを得ずトレードを実行、とすることで「チームはプレイヤーを大事にしたいが仕方なく・・・。プレイヤーの意思を尊重し・・・」とのスタイルを維持する政治的な意図も。

 しかし、何も「ネッツのGMはヤな奴だ」といっているわけではない。
 年間、50や60の「億」の金がかかるビジネスの世界。むしろ、賞賛したいぐらいだ。
 GMも所詮は「雇われの身」。先の見えないチーム運営をすれば首を切られる。その意味でここ数年、現在の戦力にキッドを加えることで進めてきた路線が、モーニングの引退、キッドの怪我、マーティンのチーム離脱と、これらを期に進路を見直すのはむしろ当然。それより、問題は残されたニュージャージー・ネッツの再建への強み、リーグ有数のPGジェイソン・キッド、来シーズン後のサラリーキャップの空き(もちろん、それを生かしたトレード案も含め)の二つをどう生かし、再建を成功へ導くか。
 GMの人柄以上に私はここに注目したいと思う。


asua



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