第62回

「2004、NBA FINAL GAME1」


 


 2003-2004シーズン、NBAファイナル。
 ロサンゼルス・レイカーズvsデトロイト・ピストンズ。
 ファイナルでの成績、9シリーズで全勝のレイカーズ、フィル・ジャクソンHC。長いHCキャリアで優勝経験だけが無いラリー・ブラウンHC。
 チームのエース級プレイヤーを4名抱えるスター軍団のレイカーズ。驚異的なディフェンスとは裏腹に得点面に大きな不安を抱えるピストンズ。
 前評判で言うならば、戦力比100:65ぐらいの評価に差がある両チーム。
 レイカーズ・ファンは誰しもが「この4人は止められない」そう信じたゲーム1。

 確かにピストンズは4人を止めることはできなかった。しかし、2人なら止める事が出来た。シャックへのダブルチームを行いつつ、得意のローテーション・ディフェンスでディフェンスに穴を作らない。もちろん、その上でシャックを完璧に封じることはできなかったが、それでもマローン、ペイトンの両ベテランに加え、シャックの周りをサポートするプレイヤーをフリーにさせず、シャックには34得点を許すも他のプレイヤーをFG・16/57の41得点と見事に押さえ込んだ。

 もう一人のレイカーズの柱、コービー・ブライアントはピストンズのテション・プリンス相手に攻めあぐね、25得点ながらFGは10/27と決していい数字とは言いがたいもの。
 ピストンズはディフェンスではベン・ウォレス、ラシード・ウォレス、エルデン・キャンベル、マメット・オカー、コーリス・ウィリアムソンがシャックへのディフェンスに代わる代わる奮闘。数字が示すとおり、シャックを抑えることは出来なかったが、マンツーマンの状態でのディフェンス側の奮闘が周りへのディフェンスの負担を軽くし、結果チームディフェンスの成功へとつながったと考えられる。
 オフェンスではこのプレイオフ、頑張りを見せていたリチャード・ハミルトンが不調(FG・5/16で12得点)なのを同じくバックコートのチャウシー・ビラップスがカバーし、22得点を記録。ディフェンスでコービー相手に大健闘を見せたプリンスはオフェンスでも随所に存在感を示し、FG・5/10で11得点。ファールトラブルで出場時間は29分とやや少なめに終わったラシード・ウォレスも3P2本を含むFG・3/4にFT・6/6で14得点をマークし勝利に貢献した。

 コービーのマークをプリンスにしたピストンズの采配はレイカーズ側も予想できたはず。しかし、それによってD・ジョージとR・ハミルトンとでミスマッチが生じ、そこから攻めようとしたことが、序盤いつものオフェンスとに違いを自ら生じさせる結果となったのではないだろうか。
 また、そのプリンスの対コービー・ディフェンスは筆者が見た限りでは文句なしだった。どのショットにも、わずかでもあの長い手を伸ばし、ディフェンスをアピールし、ショットを狂わせた。他のカバーにも積極的に参加した。シャックへのディフェンスでもマローンについていたプレイヤーはマローンがシューティング・エリアにいる時はあまりダブルチームには行かず、G陣などがカバー。R・ウォレスが他には目もくれず、マローンを徹底マークしていたシーンもあり、それには驚かされた。

 この初戦、決してファイナルに慣れていないピストンズはB・ウォレスがエアボールを放ったり、ハミルトンが必要以上にコービーのマークを振り切ろうとショット時に体が流れたりと、いつもどおりとはいかなかった。しかし、先に述べたD・ジョージを中心としたオフェンスのミスがピストンズに立ち直るまでの時間的猶予を与えたと思われる。

 プレッシャーのかかるつらい緒戦をものにしたピストンズ。それにより得た自信と落ち着きは計り知れない。

 レイカーズは比較的、アウェイでもプレイオフとなると平気で勝ったりする為、緒戦の負けによるホームコート・アドバンテージの消失に関しては大きな問題とは思わない。しかし、最高の形でピストンズの面々をファイナルに慣れさせてしまった、と言う損失は果たして今後、どうでるか。

 「事実上のファイナル」
 と言われた、ウェスタン・カンファレンスのセミファイナル、対サンアントニオ・スパーズのシリーズ。スパーズのB・ボーウェンが敗退後、「向こうは(シリーズ後半に)調整してきたが、我々は必要な調整が出来なかった」とコメントしたが、果たして今回もこの窮地を脱する「調整」ができるのか。

 ベンチから出てくるかさえ、疑問だったC・ウィリアムソンあたりが伸び伸びとプレーしている姿に危機感を感じたレイカーズ・ファンも多かったのではないだろうか・・・。

asua




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