第50回

チーム一新を目論む両チームのトレード


ポートランド・トレイルブレイザーズとアトランタ・ホークスとの間で2:3のトレードが成立しました。

ブレイザーズはウェズリー・パーソンと念願のラシードウォレスを放出し、
ホークスからFのシャリーフ・アブドゥル・ラヒムとセオ・ラトリフ、Gのダン・ディカゥを獲得しました。

金満チーム、ドラッグ、常に誰か出場停止、とのイメージを一新したいブレイザーズとしては
その「親玉」的な存在であるウォレスの放出は不可避。
そこへチームが再建期へと突入したホークスが今シーズンいっぱいで契約の切れる
両プレイヤーの引き取りに手を上げた様です。(ここまでは「News」より)


ウォレスは多くの人々がプレイヤーとしての能力を認める一方、問題児としての実績も周知の事実。
テクニカル・ファールのシーズン記録を作ってみたり、審判を脅迫したり、恐れ多くも(?)スターン・コミッショナーを批判してみたり、様々。

「彼(ウォレス)にはゼロからキャリアを始めるつもりで頑張って欲しい。
 私は他の人間の言ったことを元に彼を評価したりしない。」

とホークスのビリー・ナイトGMはウォレスを歓迎する一方、
ラヒーム放出が苦渋の決断であったと共に、チーム再建には欠かせない決断であったことも語っています。

「私はそれが(ラヒーム放出)私個人としても、シャリーフにとってもどれだけ
 厳しいものだったか、説明できない。彼は最高のプロだった。
 我々は今シーズン、勝てていない。
 このトレードがチーム再建のプロセスを早めるだろう。財政を健全なものとし、
 FA獲得も可能にしたのだから。」

また、チームのテリー・ストッツHCもウォレスを歓迎しています。
「我々は勝つことを望む才能あるプレイヤーを得た。」


ブレイザーズのスティーブ・パターソンGMも今回のトレードに自信の見せています。

「このトレードは色々な意味でフランチャイズの助けとなる。
 我々は若い柱を手に入れ、ウェスタン・カンファレンスでもひけを取らない。
 トレイルブレイザーズにとって分岐点となる日だ。
 これまでの8年間、チームの顔はラシードとボンジだった。
 我々は新しい時代に入ったのだ。」

シーズン前にボンジ・ウェルズを放出し、そして今回そのトレードで獲得したウェズリー・パーソンと共に
いろんな意味でチームの顔となっていたラシード・ウォレスを放出し、
「対シャック戦線」崩壊後、抜け出せない限界点を突破すべく、ブレイザーズは新たな一歩を踏み出そうとしているようです。

ホークスも”ヒューマン・ハイライト・フィルム”と言う長いニックネームのエース、ドミニク・ウィルキンス放出してからと言うもの
「強くなれそうなチーム」にしかなれずにここまで何度かエースを交代してきました。
このトレードで来シーズンのサラリーキャップに3000万ドル弱ほどの空きを作り、
これまでの弱小イメージの一新と、大物FA獲得で一気に強豪への復活を図るやも知れません。


スタッツ上でのトレード対象プレイヤーの比較
ウォレス&パーソン ラヒーム&ラトリフ&ディカゥ
得点 23.5 30.4
アシスト 3.6 4.1
ターンノーバー 2.5 4.7
リバウンド 8.8(オフェンス1.9、ディフェンス7) 17.1(オフェンス4.8、ディフェンス12.4)
3P% 39.3% 22.2%
FG% 45% 47.1%
FT% 76.2% 81.7%
スティール 1.1 1.8
プレイタイム 56分 74.1分
PF 3.6 7.3
ブロック 1.8 3.5
(注:この表は今シーズンここまでの成績を用いてのもの 日本時間2/10現在
   3P%、FG%、FT%は「プレイヤーの成功数の合計÷試投数の合計」で計算)


今回のトレードは先にあったフェニックス・サンズとニューヨーク・ニックスのものと性質的にはよく似ており、
「サラリーカット(財政再建と大物FA獲得が狙い!?)」(サンズとホークス)と
「純粋な戦力補強」(ニックス、ブレイザーズ)との
両者の思惑が合致した結果のトレード成立のようです。

今シーズンいっぱいで契約の切れるウェズリー・パーソンはサラリーの減額はあってもまだまだNBAに残り戦うことでしょう。
しかし、ウォレスは高額なサラリーを請求したら評判の悪さから、かつてのアイザイア・ライダー、デニス・ロドマンのように
実力がありながら消えていくかもしれません。

ラヒームは長い間「リーグでもっとも過小評価されているプレイヤー」と言われてきました。
しかし、チームを批判するわけでもなく(少なくとも私の知る中では)、黙々と自身の仕事に専念してきました。
そして遂に「勝負」ができるチームに移り、年齢も27歳とバスケットボールプレイヤーとしての最盛期を迎えつつあります。
実際に「過小評価」なのか、それとも「ただのスコアラー」なのか。
環境が整った今、どちらを証明するのも本人次第、となりました。
優勝候補でないとプレイオフにも出場できないウェスタン・カンファレンスで結果を残せれば、
新たなスーパースターの誕生となり、ひょっとしたら今回のトレードがその「始まり」になるかも知れません。

asua



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