第118回

ヒート ⇔ ウルブズのトレード」

 ウルブズ側メリットが、かなり不可思議なトレードといえる今回のトレード
 はっきりいいまして、私が気になったのでそれを整理する過程をそのままメモした感じです










トレード内容

ヒート放出
 アントワン・ウォーカー
 マイケル・ドレアック
 ウェイン・シミエン
 ドラフト1巡目指名権(条件付き)

ウルブズ放出
 リッキー・デイヴィス
 マーク・ブラント

トレードされたプレイヤーのサラリー情報など
名前
昨シーズンの主要スタッツ
2007-08 2008-09 2009-10 2010-11 トータル
リッキー・デイヴィス
17.0pts・3.9r・4.8a
681万ドル 681万ドル 計2885万ドル
マーク・ブラント
12.3pts・6.2r・0.8a
673万ドル 735万ドル 796万ドル 2204万ドル
アントワン・ウォーカー
8.5pts・4.4r・1.7a
854万ドル 932万ドル 1009万ドル 1086万ドル 3881万ドル(チームオプション行使なし、1786万ドル) 計4742万ドル

2つのチームオプションを行使しない場合
計2197万ドル
マイケル・ドレアック
3.6pts・2.8r・0.4a
312万ドル 312万ドル
ウェイン・シミエン
2.9pts・1.4r・0.5a
99万ドル 180万ドル 270万ドル 549万ドル(チームオプション行使なし、99万ドル)
 赤いはチームオプション、緑はクオリファイイングオファー


 ヒートのメリット:SFにD・ウェイドの出遅れで戦力不足のSGの両ポジションをこなせるデイヴィス獲得は大きい。経験のあるバックアップCを失いはしたが、大きな契約残があり戦力として不安定だったA・ウォーカーの放出にも成功している。ブラントは多少割高な契約だが、ミドルの打てるCとして、シャックとの併用に、シャックの不在時のウェイドのためにインサイドのスペースを作るのにと、活躍が期待される。

 ウルブズのメリット:さあ、わかりません。といいたいところだが、そうもいかないので考える。ウォーカーはチームオプションを行使しなかった場合、M・ブラントの2204万ドルに対して1786万ドルと契約残が少ない。特に期間が一年短いのは再建への期間を早めることができるのは大きいか。

 しかし、それにしてもスタッツ上ではウルブズが「-14.3pts・-1.7r・-3.0a」とマイナスが大きい。

 そこで考えられるのは、当然だがヒートからの1巡目指名権が高順位になるをの期待しているか、空いたサラリーキャップでの大物の獲得だ。
 ヒートはシャックがキャリアを終了するのはそう遠い話ではなく、もし引退すればヒートはシャックのサラリーでサラリーキャップが埋まったまま、シャックのいないロスターで戦うことを余儀なくされる。そうなれば、いかにウェイドがいようとも苦しい戦いを強いられるのは明らか。1巡名指名権がいつのものか、「条件付き」とされるその条件がどういったものかは明らかになっていないが、優勝から一転苦戦の続いているのは確かだ。
 もう一方のキャップスペースを使っての大物獲得だが、M・ブラントを無理やり放出し、チームオプションを行使しなかった場合1年契約が短くなるA・ウォーカーを獲得したをそういう理由がなければ考えにくい。そこでキャップスペースを1年早く作った2009年の夏にFAとなるのは契約延長が成立しなかった2004年ドラフト組みだ。現段階で契約延長が成立していないのは、エメカ・オカフォー、ベン・ゴードン、ショーン・リヴィングストン、ジョシュ・チルドレス、ルオール・デンなど。
 1年キャップの空きを作るのを早めたのには、翌2005年ドラフト組みがここまでぱっとしないのもあるのかもしれない。ぱっとしているクリス・ポールにデロン・ウィリアムスについてはチームが手放すとも考えにくく、デロンについてはマックスでの契約延長をユタ・ジャズ側が既に明らかにしている。他はアンドリュー・ボガット、チャーリー・ヴィラヌエヴァ、マーヴィン・ウィリアムスなど。もし、彼らを狙うとしても、契約延長が成立していなければ同じオフに制限付きFAとなっているものと考えられ、どちらも空きを1年早く作ったことで獲得を狙うこともできるわけだ。

 あと考えられるメリットは今シーズンのサラリーを抑えられたことか。今シーズンのサラリーを比較すると、ウルブズが放出した2選手で1354万ドル、獲得した3選手で1265万ドルとおよそ100万ドル抑えることができた。ウルブズはラグジュアリータックス課税ラインをギリギリ超えており、今回のトレードでギリギリではあるが支払いを免れるラインにとサラリー総額を抑えることができた。だが、ラグジュアリータックス課税ラインを下回ったとして、抑えた100万ドルとタックス支払いとでめいいっぱいとしてもトータル200万ドルの削減が成功したに過ぎず、これが主因とも考えにくいが、これら複数のメリットからウルブズは動いたものと考えている。
 あとはシミエンに多大な期待をしている、としか私は思いつかない。

 他にウルブズのメリットではないが、ケヴィン・ガーネット放出でジュワン・ハワードがトレードを希望したように、R・デイヴィスもトレードを希望していたのかもしれない。そうでなくとも、今シーズン後にFAとなるベテランのデイヴィスが、再建中のチームと再契約するとは、よほど金銭面のメリットが大きくなければ考えにくい。そこで見返りなく失うことを思えば、今シーズンが勝負の年ではない以上、スタッツのマイナスよりも上記の通りいくつかのメリットを得られるほうがいいと判断したのかもしれない。



 とにかく、このトレードでヒートは救われた。
 ウェイドの出遅れによる開幕当初のバックコートの得点力不足は解消され、SFの補強も完全ではないが大きく前進した。
 フロントコートはこれでシャックに、ユドニス・ハスレム、アロンゾ・モーニングにブラントと層は厚くなり、怪我がちのシャックの欠場にも対応できるゆとりができた。
 ウォーカーが担っていたオフェンスの突破口を開く役割は、R・デイヴィスで補うことができる。
 トレーニングキャンプでコンディションの調整不足が発覚し、その調整に年明けまでかかるとされたウォーカーを放出し、即戦力を補えたのも今シーズンの戦力としてはプラス。ただ、これにはパット・ライリーHCの方針に従わないプレイヤーは放出も辞さない、との姿勢を示す意味もあったのかもしれない。もちろんそんな意図はないのかもしれないが、そう考えることができるのは事実だ。このことがプラスのみに働くのかどうかはわからない。連敗が込めばチーム内の不満噴出の一因となる可能性もあるからだ。
 とにかく、当面の戦力としては大きなプラスなのは間違いない。

 それにラグジュアリータックス支払いを避けたがっていたヒートが、このトレードでは今シーズンのサラリー総額を増やすことを容認した。ここにオフの補強失敗により容認するほかなかったというのと、今シーズンにかける意欲とを、それぞれ半々感じる気はする。

 asua


inserted by FC2 system