第117回

2007ファイナル、ゲーム1。というか偉そうにキャブスへ助言

 キャブスのパターンであったラブロンへPFもしくはCがスクリーンにいき、ラブロンがWチームをひきつけ、パスをさばくというのはスパーズには通用しなかった。

 まずはラブロンへマッチアップしているB・ボーウェンが半分のパスコースをふさぎ、PFのマッチアップであるT・ダンカンがラブロンを完全に「Wチーム」してしまうことでラブロンの行動の自由を阻止する。スクリーンをされた際、基本的にはこの場合のダンカンの役割はカットインの阻止だ。仕掛けられると、下のポジションのプレイヤーである以上、スピードでついていけない。コースをふさぎ、カットインを阻止する。その間に本来のマッチアップマンがマークマンのディフェンスに戻り、ダンカンはインサイドに戻り、ディフェンス側は危険な位置へとローテイションをする。これはキャブスがスパーズのオフェンスに対して行っていることでもあり、一般的なスクリーンに対する対処法だ。つまりは、Wチームのふりをするだけで、時間を稼ぐに過ぎない。
 しかし、スパーズは完全なWチームを行い、そこでTOをさせる勢いだ。当然、パスコースもラブロンの行動にも大きな制限が加えられ、得意の形かと思われたのが一転、危険な「TO→即失点」というものになりかねない。ダンカンの機動力があってこそできるディフェンスだといえると思う。結果、キャブスはラブロンからの「アシスト」を待つのではなく、ラブロンを救いにいかなくてはならず、ショーティングレンジから離れざるを得ず、オフェンスは形を成さない。
 ピストンズがラブロンがボールを持つと即Wチームに来たのに対し、スパーズはラブロンが仕掛けてきてからのWチーム、トリプルチーム。これはカットインが始まってから止めることができる自信のあらわれかもしれない。ここもやはり、ダンカンの存在が大きい。ピストンズももし、ベン・ウォレスがまだいたら違う手が打てたのかもしれない。

 話を戻して、カットインに対しては、複数のディフェンスにつぶされるラブロン。ディフェンスを広げるためにパスをさばくが、D・マーシャルは決められない。オフェンスをシャットアウトするのではなく、「ぬかれない」ことを第一としたボーウェンのディフェンスからはファールももらえず、カンファレンスファイナルまでの16ゲームで10.4本のFTを打ったが、この日は4本止まり。確かに「ファールでは?」というシーンもあったが、それはスパーズが82ゲームを戦いホームコートアドヴァンテージを獲得した結果だから、何もいえない。
 ラブロンの14得点は、3Pが2本、カットインから苦しい体制で捻じ込んだFGが2本だけという内容。4アシストに6TO。
 更に驚いたというか、さすがというか。ダンカンはやはり「基礎バスケ力」が素晴らしい。ある程度は対抗できるだろうと思っていたキャブスの控えFのA・ヴァレジャオだが、らしい奮闘振りでチームを奮い立たせてもいたが、対ダンカンに限っては全くダメ。ディフェンス・リバウンドさえ確保できず、ダンカンにオフェンス・リバウンドを拾われまくっていた。(ゲームハイの5本のオフェンス・リバウンドにトータル13リバウンドをダンカンは記録している)
 Z・イルガウスカスもサイズでは勝っているものの、スピードでついていけない為、どうしても引いて守る形になり、ミドルからのジャンパーを決められてしまう。だが、私はそれでもイルガウスカスに任せ、ダンカンにミドルを打たせたほうが、スパーズがオフェンスで他の選択をするよりはよかったのではないかと思った。リバウンドでもイルガウスカスならその絶対的な高さで対抗できたはず。

 そして、スパーズと対戦したどのチームもそうだが、T・パーカーを止められない。そして、巧みなパーカーの得点技術にインサイドで得点を重ねられる。
 しかし、ここでいい意味での驚きを与えてくれたのはD・ギブソン。3Pを次々決める姿が印象深い彼だが、持ち前のスピードでパーカーのカットインにもキャブスの誰よりもついていく。線が細く、あたりに弱いところはあるが、あっさり抜かれる他のGをマッチアップさせるより大いに意味があるものと思われた。
 ギブソンは3Pも2/3と好調だったにもかかわらず、その後に3Pを連発し、自滅するようなこともなかった。打っていたほうがよかったのかどうかはわからないが、自身の役割を守ったという点で安心してコートに出せることは確認できた。ボール運びもカンファレンスファイナルでは早めのパスでつないでいたが、今日はしっかりその任をこなしていた。
 キャブスも他にもいい点は確かにあった。
 ・個々の能力は高く、それぞれが1on1を仕掛け得点することも可能
 ・イルガウスカス、グッデンをミドルでフリーにできていた(Zは今日は決められなかったが)

 だが、スパーズにもまだ破壊力が増す伸びしろはある。
 ミドルからのショットが今日は決まらなかったが、フリーを作れていたこと。苦しくなると起用するB・バリーの3Pなどをまだ使わずにすんでいること。M・フィンリーが次戦もFG1/7と低調なままとは考えにくいことなどがそれだ。

 ゲーム1をスパーズが勝利し、かつスパーズはまだ破壊力を増すことができるこの状況下で、キャブスが勝利するには今日と同じゲームをしていては勝てない。

 そこで管理人の提案する4ヶ条

 ・Zをダンカンにマッチアップさせる。ミドルからのショットは諦める。連続で決まるようであれば、早めのWチームで対応する。

 ・ギブソンのスターター起用。全く効果的な働きができなかったヒューズよりはルーキーに賭けてみるほうが今も将来も明るいと思われる。逆にヒューズは元々SGで、ラブロンを休ませることも状況によってはヒューズが控えていれば可能となる。

 ・イルガウスカスの221pの高さはスパーズといえ脅威のはず。もっとオフェンス機会を増やす。

 ・先に説明したスクリーンの場合はラブロンにより積極的にカットインをさせる。これまではスクリーンからは外へ出てディフェンスをひきつけるようにしてきたが、カットインをここで積極的に試みることで、ゲーム1よりはこのプレーが生きてくるのではないだろうか。ここでのプレーがそれなりの成功を収めればキャブスは自信を持って行えるプレーができることになり、オフェンスにも動きが生まれるはず。


 ギブソンのスターター起用はディフェンス要員としてだけでも、本当にしてほしいところ。


 asua
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